カブシキ!

  • 2013/06/08(土)
  • 臆病者のための裁判入門 橘玲

    臆病者のための裁判入門

    橘玲氏の著作です。

    いつもの、経済をテーマにした著作とは全く異なるテーマを扱っています。

    テーマは「裁判」

    著者はひょんなことから知人の外国人男性の保険金受け取りをめぐるトラブルの解決を手助けすることになりました。
    非は完全に保険会社にあることがわかり、すぐに解決するかに見えましたが、事態は思わぬ方向に進展し、ついに「少額訴訟制度」を利用して、裁判に訴えることに。
    「少額訴訟制度」とは、請求額が60万円以下なら、簡易裁判所で審理から判決までを原則1日で行ってくれる制度です。市民が身近な紛争を裁判で安価で簡便に解決できるように1998年に作られました。
    日本を「法の支配」が行き届いた「法化社会」にしよう、という思いが、この「少額訴訟制度」には込められています。
    しかし、著者と知人の外国人男性は、摩訶不思議なニッポンの裁判制度の闇に迷い込んでしまいます。どこに行っても、悪い人には会わず、善意の人ばかりなのに、簡易裁判所と地方裁判所をたらいまわしにされ、少額の保険金と賠償が得たいだけなのに、多大な時間と労力を費やすことになってしまいました。一日で終わるはずが、決着を見るまでに何と二年半の歳月が流れていました。
    その体験を元に日本のニッポンの「使えない」司法制度の問題点を解明したのがこの新書です。問題の一端は、「少額訴訟制度」で扱える紛争の種類が家賃未納や交通事故の損害賠償など定型的なものに限られていること。
    著者が関わったようなちょっとこみいった訴訟になると簡易裁判所では扱ってくれないのです。
    公正中立な「法化社会」を建設する過渡期にあるニッポンで、素人が少しでもややこしい訴訟を始めるとどんな目に遭うのか?
    その一部始終がわかる貴重なルポであり、身近にはなったけれど、まだまだ使い勝手が悪いニッポンの裁判を使いこなすための画期的な入門書でもあります。(Amazonの紹介文より)



    ほとんどの人は、一生裁判の原告にも被告にもならずに一生を終えます。
    わたしは、軽微な経験ですが、被告になったことがありますし、身内が被告になったことがあります。といっても、刑事事件ではありません。

    本書の前半は、Amazonの紹介文にあるように、橘玲氏が友人の外国人男性の代理人となり、保険会社を相手に少額訴訟を起こしたことが記述されています。
    読み物として、非常に面白いです。スラスラ読めます。


    後半は日本の裁判の問題点がいろいろと書かれています。
    橘玲氏は、出版社に勤務していた経験があり、その時に少なからず裁判で訴えたり、訴えられたりという経験があるそうです。

    以下、面白かったところを箇条書きで。

    少額訴訟
    ・少額訴訟制度は1998年に創設され、60万円以下の事件を扱う。その特徴は、個人の本人訴訟を前提とし、原則として一日で審理を終えて、その場で判決が下される。
    ・大抵が貸金請求や、売買代金請求で、貸したお金を返してもらえないとか、商品を送ったのに支払いがない、というような少額の紛争が行われる。
    これらの傍聴はとても面白いらしい。
    一度は傍聴してみたい。

    民事訴訟と名誉毀損
    ・民事訴訟では、被告は原告が主張したことだけに反論すればいい。原告が事実を立証できなければ、それだけで被告は裁判に勝つことができる。事実認定を争う民事訴訟は、もともと原告が不利、被告が有利な仕組みになっている。
    それに対して、名誉毀損はプライバシーを侵害し社会的評価を貶めるような虚偽の報道をされたという訴えだから、挙証責任は報道したメディア側にある。名誉毀損で訴えられたメディアは、公益に資することを目的として、十分な取材のもとに、真実であると信ずるに足る理由をもって報道したことを証明しなくてはならない。原告はメディアの主張に個別に反論していけばいいだけだから、一般の民事訴訟とは攻守が逆転している。
    (三浦和義が拘置所にいながら、本人訴訟でメディアを相手に名誉毀損の訴えを起こし、連戦連勝できた理由。)

    判決はケツ拭く紙ほどにも役に立たない
    判決で負けても賠償金を払おうとしない被告。そうようなときのために強制執行の制度があるが、日本ではこれが機能していない。
    債務名義とは、強制執行の対象となる債権の存在および範囲を公的に証明する文書で、財産の名義人が債務名義と同一の場合は、執行官はその財産を差し押さえることができる。だがこのことは、逆に言えば、財産の名義を変えてしまえば強制執行はできないということだ。
    これを利用して、被告は裁判に負けそうになると、銀行預金などの妻や子供の名義に変えてしまう。たったこれだけで、もはや裁判に勝った債権者は被告の財産を強制執行できなくなる。
    自分の財産を子供に譲れば、ふつうは贈与税が発生する。だが日本の税務署は実態基準で納税義務を判断するので、たとえ銀行預金が子供の名義になっていても、その口座を実質的に親が支配していると判断すれば贈与とはみなさない。
    裁判所は子供名義の預金が被告の財産だという客観的な証拠がなければ強制執行を認めない。ところが日本では、裁判所の判決があっても国税庁に税務情報を照会することはできず、公権力以外には銀行の取引内容を調査することもできないのだから、被告はなんの苦労もなく強制執行を逃れることができる。


    2ちゃんねるの創始者西村博之
    西村博之氏は、未払いの賠償金や、裁判所の仮処分に従わないことに対する制裁金は少なくとも5億円以上に上るとされている。
    「支払わなければ死刑になるのなら支払うが、支払わなくてもどうということはないので支払わない。」と述べている。
    民事訴訟で負けて賠償金を支払うなんてバカバカしいだけなのだ。


    以上のような面白い話がたくさん書いてあります。
    また、われわれが加入している自動車保険などには、ほとんどに弁護士費用特約が付いています。弁護士を雇わなくてはいけないような紛争に巻き込まれても、自動車保険で弁護士費用が賄えることがあるのです。
    知らなかったでしょ?
    このことは、特約はつけたけど、それを利用させない保険会社の責任であり、今後広く社会に広報すべき内容だと思います。

    いつも単純明快な文章を書いてくれる橘玲氏。
    裁判でも明快な文章を書いてくれました。

  • 2013/04/24(水)
  • 日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル 橘玲

    日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル

    橘玲の最新刊です。

    しかし、内容は氏がいままで一貫して言ってきたことをまとめたものです。
    目新しいことは書いてありません。

    わたしのように、氏の著作をすべて読んでいる者にとっては、退屈な本ですが、
    それでも読ませる力はあります。さすが橘玲です。


    読みながら、付箋をつけたところを箇条書きに。


    日本の経済が破綻しても、原理的に起こることは3つしかない。
    1.国債価格の暴落(金利の上昇)
    2.円安
    3.インフレ


    この3つしか起こらないことを前提として、この本は書かれています。


    3.11の東日本大震災のときは、「被災した日本企業が資金確保のために海外資産を売却する」との思惑でヘッジファンドが投機的な円買を仕掛け、一時的な円高が起こりました。このときは先進諸国の協調介入ですぐに円高は修正されましたが、「破滅シナリオ」における金利上昇局面でも同じストーリーで円高の投機が仕掛けられる可能性があります。
    破滅シナリオ=円安というわけではありません。


    戦争や内乱と違って、市場での出来事は継続性がつよいので、デフレからハイパーインフレに至るにはマイルドなインフレと円安による楽観的な時期があり、金利の上昇と企業倒産、自己破産の増加で不安が広がり、ついには国債が暴落したパニックが起こる、というように順を追って状況が悪化していくはずです。



    たった3つの金融商品で、国家破産のリスクをヘッジできる。

    1.国債ベアファンド
    国債ベア


    2.外貨預金

    3.物価連動国債ファンド
    インフレ率に応じて元本が増えていく、便利な金融商品。
    消費者物価指数に応じて元本が増減するように設計されています。

    毎年10%ずつ物価が上昇し、10年後には物価(生活コスト)が2倍(10年間の物価上昇率が100%)になるとしましょう。
    このとき利率5%の物価連動国債を保有していると、インフレ率に応じて毎年10%ずつ元本が増えていって、それに応じて配当も増え、10年後には元本が倍になって償還されます(配当も倍になります。)。このときは物価も2倍になっているわけですから、元本の実質価値は変わりませんが、インフレのリスクはちゃんとヘッジできるわけです。

    物価連動国債ファンド




    預金封鎖対策としては、格付けの高い海外の銀行に外貨預金をしてもいいのですが、日本の「国家破産」リスクをヘッジするということであれば、もっとも効果的なのはニューヨーク市場に上場された「日本国債ベアETF」でしょう。現在、ティッカー「JGBS(レバレッジ1倍)」と「JGBS(レバレッジ3倍)」の2本があり、ドル建てなので、国債価格の下落で株価が上昇するだけでなく、円安で為替差益が得られます。これを米国の証券会社で購入すれば、資産は米国の法によって保護されますから、預金封鎖のリスクを完璧に遮断することができます。
    米国以外の証券会社を通して購入することもできます。
    とりわけ、日本国債の下落率に3倍のレバレッジをかけた「JGBS」は現時点での究極の日本国破産対策ということになるでしょう。



    最後に、この本には「オプション」についての説明もあります。
    オプションは人類が開発した究極の投資とも言われます。
    このオプションについては、この本で勉強したのですが、見返してみるともう5年も前なんですね。。
    あれから5年経って、わたしはオプションの取引をやっていません。
    オプションって結構難しいんです。


    プット・オプション買いの使い方



    この本は、橘玲氏が一貫して述べてきたことの集大成とも言えます。
    この本に書いてあることを実践できるひとはかなり限られた人たちだと思います。
    しかし、行動力のあるものだけが、国家破産の一大事が起きた時に生き延びることができるのだと思います。


    続きを読む。
    に、あとがきを転写しておきます。

    »[日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル 橘玲]の続きを読む

  • 2012/12/28(金)
  • たったひとつ正しい主張ではなく、たくさんの風変わりな意見を

    先日ご紹介した橘玲氏の「不愉快なことには理由がある」の中に、
    たったひとつ正しい主張ではなく、たくさんの風変わりな意見を という文章があり、それがとても印象にのこったのでここに記しておく。


    ジェームス・スロウィッキーというひとが書いた本に、「みんなの意見は案外正しい」という本がある。
    要約すると、たったひとりの専門家の意見よりも、素人の集合知のほうが正しいという意見です。

    いま、あなたの目の前に、中肉中背の成人男性がいるとしましょう。
    このひとの体重は何キロか?という問に正確に答えられますか。 あなた一人では正確な答えは出せません。しかし、ここに100人の人が居て、それぞれがあてずっぽうで答えを寄せ集めます。
    あるひとは、40キロ!と答えるかもしれません。あるひとは60キロと予想しました。なかには、100キロ!と突飛な意見をいう人がいるかもしれません。
    いろいろな意見はあってしかるべきなのです。
    おどろくべきことに、この集団の答えの平均値はこの成人男性の正確な体重にとても近似しているのです。この成人男性の体重は63.5キロでした。

    集団の答えの平均値は63.4キロでした。

    世の中には、風変わりな意見をいう人が居ます。風変わりなひとはたいていは少数派ですが、それらの意見は実はとても貴重な意見なのです。
    成人男性の体重を100キロと見積もるひとも、40キロと見積もるひとも、とても大切な意見なのです。

    われわれの生きる世界には、様々な意見が必要です。
    たったひとりの正しい意見を求めるのではなく、集合知の正しさを認識しながら、少数の意見を尊重していかねばなりません。

    橘玲氏の拝啓イギリス
    橘玲氏の背中

  • 2012/12/10(月)
  • 不愉快なことには理由がある 橘玲

    橘玲氏の新刊です。


    不愉快なことには理由が

    週刊プレイボーイに毎週のっている連載をまとめた本です。
    しかし、ひとつのテーマに沿って書かれているので、主張に一貫性があります。
     
    この本は、現在の問題(不愉快なこと)について、その理由を「進化論」に求めます。
    我々はDNAの乗り物で、DNAが生き残るのに最適化されて生きています。強い個体が生き残るでなく、賢い個体が生き残るのではなく、「生き残ったものが生き残る」という説明の仕方です。

    例えば、子供を愛することができない個体が突然現れても、このプログラムをもった個体はうまく子供を育てることができないので、その遺伝子(プログラム)は次世代に受け継がれることなく、途絶えてしまいます。
    だから、我々は子供を愛するようになります。

    この遺伝子(プログラム)は何億年も前から引き継がれてきた遺伝子に搭載されているわけですから、突然現代に生まれた僕帯に理解できるはずがありません。

    地球の誕生を1月1日とすると、生命が誕生したのが4月8日、それから11月1日までは単細胞生物しかおらず、最初の魚類が出現したのが11月26日の午後。恐竜の時代は12月9日から26日あたりまでで、最初の猿が出現したのが、12月25日、人類の祖先が現れたのが12月31日の午後8時10分です。エジプトやメソポタミアに最初の文明が誕生してからは、わずか30秒しか経っていません。

    最後の30秒だけで、一年を語ることは不可能です。

    我々が進化論を語るときは、生命の誕生にさかのぼって考えなくてはなりません。我々はどのようなことを考えて、環境に適応してきたのか。


    この本は「進化論」の観点から我々の不愉快なことを説明しようとします。
    面白い本です。

  • 2012/10/09(火)
  • 橘玲氏が初めて講演を。聞きに行きました。『「日本」というリスクを“管理”するために必要なこと』 その4

    つづき。

    終盤は、未来の話。日本が今後どうなって行くかという内容でした。

    ・未来がどうなって行くかはわからないが、絶対確実なのは人口統計。今後10年間で団塊の世代が70代となり、医療費がかかり、労働人口が減っていくのは変えようがない。
    いまのシステムで、2020年を超えるのは絶対に無理、このときに大きな改革が起きる。

    ・具体的には、①金利の上昇②インフレ③円安 この3つしか起きない。
    財政破綻は、明日突然起こるのではなく、必ず何かの前兆がある。前兆がわかってから対処ても決して遅くない。危ぶむなかれ。
    とりあえず、普通預金をもっていれば、どのようなことがあっても対処できるはず。


    ・財政破綻がわかっているのだから、財政破綻にヘッジをかけておくことが大切。
    とりあえず、普通預金で良いと言ったのは預金封鎖は起こらないと考えているから。預金封鎖は憲法が定めるところの財産権の侵害にあたる。

    ①金利の上昇(国債の下落)に張っておく。JGBSやJGBDなど。金利が上昇したら、もうかるファンド。これはフリーランチかもしれない。(金利は0以下にならないから。)
    ②インフレに張る。 物価連動の国債。物価指数に連動する商品を買っておく。
    ③円安に張る。 外貨預金。手数料が一番少ないのはFX。

    ACWI 世界全体の株価指数に連動するファンドも売っている。コード 1554



    具体的なファンド名を挙げての講演でしたが、もちろん「投資は自己責任で。」ということでした。


    90分の講演のあと、コーヒーブレイクがありました。
    このときに、改めて会場を見渡してみましたが、97%が男でしたね。女性はほんの数人でした。しかもほとんどがオッサン。
    若い人はとても少なかったように思いました。

    20120930橘玲講演2
    コーヒーブレイクの様子。会場はほとんど男。


    橘玲氏が、1980年からどのように考え、どのように行動してきたのかがわかり、本当に有意義な講演でした。
    著作で読むよりも実際に氏の顔を拝見しながら、氏の声で聞く話は、本を読むよりも100倍インパクトがありました。

    講演に参加されていた方々は、言うまでもなく氏の熱烈なファンですから、わたしと同じ感性を持つ人たちです。大人しくて、知的で、理性的な印象を受ける紳士が多かった気がしました。

    今後、氏がどのような活動をしていくのかが楽しみですが、とりあえずは今後のことはなにも考えていないようでした(笑)
    TVや対談の類に出るのはまだ当分先になりそうとことです。


    帰りの品川駅の様子。
    帰りの品川駅

  • 2012/10/08(月)
  • 橘玲氏が初めて講演を。聞きに行きました。『「日本」というリスクを“管理”するために必要なこと』 その3

    つづき。


    つづいて、いつも出てくる。日本株とアメリカ株の指数の推移のグラフがスクリーンに映しだされ、このグラフについて氏は語りました。


    ・昭和30年からはじまった日本の好景気。この高度経済成長の時代に最適化するように現在の制度が作られている。
    ・このときの黄金の法則は、「若いうちに無理をしてでも住宅ローンを組んで、定年まで働き続ける。そうすればお金持ちになれる。」誰もがこの法則を信じて疑わなかったのがバブルの時代。ご存知のように、それはただの幻想だった。バブルの崩壊とともに黄金の法則は吹っ飛んでしまった。

    ・この時代に最適化するように現在の医療保険や、年金制度、会社の年功序列、終身雇用制度は作られている。それらは既に破綻していることがわかっているのだが、制度そのものが誰かの既得権になってしまっているため、改変できない。

    ・1980年から2000年はアメリカはインターネット・バブルに湧いた。株価は右肩上がり。
    そのころに生まれた理論が、「経済は右肩上がり、株は買ったら持ち続けろ。」という理論。(さわかみファンドなどのこの理論を盲信している。)

    ・ 国家は夢を見れないが、個人は夢を見ることができる。
    個人のリスクを国家から切り離す


    ・まったくの余談であるが、今日ここに集まっている人たちは日本の知識層であると自信を持って良い。日本人で月に2-3冊も本を読む人はたったの100万人。
    人口が1億人だとしても、人口の1%
    本を読んで、今日ここに講演を聞きに来ている皆さんは、間違いなく上位1%に入る知識層である。将来について、過度に不安にならなくても良い。

    ・今後はクリエイティブクラスとマックジョブの2極化が顕著になってくる。社会が変わる時が大きなチャンス。

    ・人的資本は一点集中が原則。つまりいま自分がもっている(金を稼ぐことができる)才能に集中せよ。 金融資本は分散投資が原則。
    このことは「残酷な世界で~」に詳しく書かれている。

    ・家計を維持し、家族を守っていくには、①収入を増やす。②支出を減らす。③金融資本を増やす。の3つしか無い。




    中盤1/3はだいたいこんな内容でした。箇条書きで申し訳ありませんが、2010年ころからの著作の内容が大半でした。

    つづく。

  • 2012/10/07(日)
  • 橘玲氏が初めて講演を。聞きに行きました。『「日本」というリスクを“管理”するために必要なこと』 その2

    つづき。


    会場では、撮影と録音が禁止されていましたが、橘玲氏が登場する前の緊張をカメラにおさめておきました。

    会場の様子です。開演前。
    氏の登場を楽しみに待つわたしたち。
    氏は、この演台に立ってお話されました。

    20120930品川グース橘玲講演1


    もちろん、講演中は撮影を行なっておりません。


    さて、我々の前に現れた橘玲氏は、予想していた通りの温厚な紳士の外見をしていました。

    まずは、ご自身の歴史を語ってくれました。これまでの著作を全部読んでいるわたしにとっては、周知の事実でしたが、改めて氏の口から自分の経歴を語られると、感慨深いものがあ

    りました。
    以下、自分でとったメモを文章に起こしてみます。



    ・1980年から1990年くらいまでは宝島社という出版社に努めていた。
    ・1995年 30代半ばにおいて、オウム真理教の取材を行なっている。サティアンという施設で、信者と寝食をともにし、彼らの内面を取材している。この時の体験が人生の転機となり、独立することを考えた。
    ・メディアワークスという会社に転職し、1996年には橋本内閣時の金融ビッグバンを体験する。海外投資というものがやっと庶民に開かれた元年、自ら率先して海外に投資すること実践し、その時の仲間たちとの体験から、「海外投資を楽しむ会」を設立する。
    ・1998年 ゴミ投資家シリーズを刊行し、「海外投資を楽しむ会」が軌道に乗り始める。ゴミ投資家シリーズの巻末に書いたコラム「海外に実際に口座を開いてみた」に大きな反響があり(その当時はネットの掲示板が主流)、海外投資に対する世間の関心の高さを実感する。
    ・「海外投資を楽しむ会」の会員が3000人を突破したとき、独立すること考えた。(2100円の入会金を払ってでも会員になりたいという人が3000人も居たことに感動した。)

    ・2001年 9.11の直後に独立
    香港から日本に帰る飛行機の中で、「国際金融ミステリー」というアイデアを思いつく。
    節税や海外投資の指南本を書いても、ただ脱税を助長しているだけと世間に避難されるだけだ。殺人や犯罪の指南本は無いが、殺人や犯罪のミステリー小説は売れている。だったら、節税や海外投資をテーマとした「国際金融ミステリー」を書いてみてはどうだろうか。
    このアイデアが、「マネーロンダリング」の元となる。
    小説が完成したとき、作者は匿名のほうが良いだろう。しかも男か女かも、日本人か中国人かもわからないような謎めいた名前がよいだろうということで、漢字二文字で、しかも性別がわからないような名前にした。(玲は日本語では「あきら」とよみ、日本では男の名前だが、中国語では玲(リン)と発音し、完全に女の名前)
    氏の著作は中国語でも出版されているが、中国では完全に女だと思われている(笑)

    ・2001年からの10年間は完全に匿名を貫いてきたが、2011年の3.11から少しずつ考えが変わってきた。
    この10年間では、ベストセラーとなった黄金の羽根の拾い方をはじめ、人生設計に関する本をたくさん書いてきた。

    「著作を読んで人生が変わりました」の話や、「有名になっても意味がない」など、雨の降る日曜は幸福について考えように書いてある氏の考え方を貫いてきた10年間だった。

    ・印象に残った言葉、海外の富裕層においては常識的な発想。「プライバシーこそが最も重要な資産」

    ・2011年の3.11は自分の考え方をかえる大きな転機だった。これについては「大震災の後で人生について語るということ」に詳述してある。
    大震災の後に、持ち家を失い、ただ呆然と避難所で過ごす人たちをみて、いままで自分の訴えてきたことはただの絵空事だったと考え始めた。
    匿名で語るよりは、自分のプライバシーを失うというリスクをとって、顔を晒して語ることで、説得力が増すのではないか。



    最初の1/3はこんな内容の話でした。


    つづく。

  • 2012/10/05(金)
  • 橘玲氏が初めて講演を。聞きに行きました。『「日本」というリスクを“管理”するために必要なこと』 その1

    2012年9月30日 わたしの敬愛する橘玲氏が初めて公の場にその顔を見せました。

    台風の近づいてくる9月末日、わたしは地方から品川まで上京していました。
    その目的はただ一人、橘玲氏の講演を聞くためです。

    TKPガーデンシティ品川にたどりついたわたし。休日を丸々潰して、日帰りで品川まで来るのですから、かなりの気合の入りようです。
    本気です。

    20120930 品川グース1
    品川GOOS ここにTKPガーデンシティ品川があります。



    橘玲 ☓ ザイ・オンラインの企画
    海外投資の歩き方 
    というサイトがオープンしたのを記念して、橘玲氏が初めて人前で講演するという企画。

    その参加費、15000円。

    薄給のわたしにとっては、かなりの高額ですが、自他共に認める橘玲フリークのわたしが聞き行かないと話が始まらないでしょう。

    ということで、地方からわざわざ品川までの交通費も捻出し、氏の講演を聞きに行きました。

    20120930品川グース2


    写真では晴れていますが、この日は沖縄には既に台風が上陸していました。
    夜には関東にも台風がやってくるという予報でしたが、、、悪天候の予感のなか、品川に到着です。

    会場はここの1階でした。

    つづく。

  • 2012/06/13(水)
  • (日本人)かっこにっぽんじん 橘玲

    僕の尊敬する橘玲氏の本。今回も発売日に買いました。

    今回もとても深いテーマに切り込んでいます。

    日本人()



    我々の抱いている日本人のイメージは、外国から輸入したものであって、本当の日本人は自己中心的で身勝手、徹底した個人主義のひとたちだ。
    というのが本書のテーマです。


    山岸俊男の著作によって、「和をもって貴しとなす」という従来の日本人観を根底から覆されたことが本書の出発点になっている。(あとがきより)

    僕たちが思っている日本人のイメージは実は間違っていて、そのイメージとは新渡戸稲造の書いた「武士道」に拠っている。
    新渡戸稲造は、日本人の立場から武士道を書いたと思われがちだが、新渡戸稲造はアメリカの大学に学び、アメリカ人を妻にしたキリスト教徒だ。新渡戸稲造が世界の人たちにわかりやすく「日本人」を知っても

    らおうと書いたのが、武士道なのだ。つまりアメリカ人である新渡戸稲造が、日本人をわかりやすく欧米に説明しただけなのだ。新渡戸稲造は日本人のことを知るはずもない(新渡戸は23歳で単身アメリカに渡っている)し、そもそも新渡戸稲造に日本人論を書くことは不可能なのだ。

    日本人を語る上で不可避とされている「武士道」さえも、正しい日本人を描写していない。

    橘玲氏がたどり着いたのが、社会学者の橋本努氏の著作だ。この著作にある、ロナルド・イングルハートの価値マップは「日本人は世界でも突出して世俗的な民族」であること示している。

    イングルハート価値マップ



    そして、橘玲氏はこの価値マップの右上にこそ自由のユートピアがあると考える。
    徹底的に個を尊重し、徹底的に世俗的な社会を実現することで、我々日本人は人類史上誰も到達したことのないユートピアに達することができる考える。
    荒唐無稽に思える考えであるが、日本のように成熟してしまった社会では、今後我々が進む道は、価値マップの右上なのかもしれない。





    そんなことが書いてある本です。

    とても良い本です。
    おすすめです。

  • 2011/08/06(土)
  • 大震災の後で人生について語るということ 橘玲

    大震災の後で人生を

    7月29日に発売された橘玲氏の新刊を即読みしました。

    尊敬する氏の新刊を、クーラーの効いた部屋でビールを飲みながら読める自分を幸せに思います。

    この本は、以前から氏の本を読んでいる人には「焼き直し」に思えるかもしれません。氏が以前から説いている「人生設計」について、おさらいしている部分がほとんどです。
    氏の本を熟読している僕にとって、新鮮さはありませんでした。

    氏は3.11の震災を機に、自分の考えが未熟であったことを実感したそうです。「人生における選択肢を増やすべき」と説きつづけてきた氏が、全く選択肢も持たずに避難所に逃げ込んだ老人をみて、自分の考えがただの絵空事だったことに気がついたのです。

    だったらその絵空事を突き詰めてやろう。


    大震災の夜に氏はそのようなことを考え、わずか2週間でこの本を書いたそうです。

    http://www.tachibana-akira.com/2011/08/2967
    に詳細が書いてあります。


    以下、僕が付箋をつけたところを箇条書きに。


    日本は2つのプラックスワンに襲われた。ひとつは2011年3月11日の東日本大震災であり、もうひとつは1997年頃に沢山の人々の人生設計が狂ってきたこと。1997年を堺に毎年自殺者が1万人以上増えた。この現象は10年以上つづいたため、もうひとつのブラック・スワンのために10万人以上のひとが亡くなったことになる。このことに、殆どの人は気がついていない。

    戦後の日本の人生設計は4つの神話の上に築かれていた。
    1.不動産の価値は上がり続ける。
    2.会社は潰れない。
    3.円はもっとも安全な資産だ。
    4.国家が破産することなどありえない。


    1997年は日本に金融危機が起こった年で、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券が相次いで経営破綻した年。
    会社にしがみついて、定年まで勤め上げ、老後は年金で暮らすという「神話」が崩れた年でした。ローンを組んでマイホームを買って、定年まで払い続れば安泰というマイホーム

    「神話」も崩れた年だった。
    自分の一生を、「一点張り」で賭けてきた「神話」が崩れることにより人生設計のすべてを失った人たちがどんどん自殺していった。その殆どが40歳代から50歳代のサラリーマン。

    2020年には800万人の団塊の世代が70歳を超えて、本格的に医療・介護サービスを利用し始める。この高齢者爆発によって医療・介護保険制度の崩壊は必至。そこにさらに少子化で労働人口が減少し、追い打ちをかける。(もう、移民を受け入れるしかないのです。)


    日本には1億2000万人のひとが住んでいて、その殆どの人が読み書きができる。しかし、出版業界では「本を読むのは人口の10%」といわれてきた。読書調査では月に一冊も本を読まないひとが約5割とされているが、残りの人達が文芸書や専門書、ビジネス書を読んでいるわけではない。有り体に言ってしまえば、本書のような本を読むには一定程度のリテラシーが必要。
    経済書となれば、想定読者数はわずか400万人。

    これからのサラリーマンの仕事が2割のスペシャリストと8割のバックオフィスに2極化していくとするならば、本書を読んでいるあなたは間違いなく日本社会の知識層の上位10%に入っている。


    自分自身を法人化したうえで、会社と業務委託契約を結ぶことで、これまでの仕事を継続しながら所得を大きく増やすことが可能になる。
    独立する際に重要なのは、会計、税務、ファイナンスなどのファイナンシャルリテラシーで、サラリーマンはこれらを「雑務」として会社にアウトソースしているために、税金は確定申告の医療費控除、ファイナンスは住宅ローンのことしかわからない、というひとが大半。マイクロ法人では全ての財務をじぶんでこなさないといけない。
    既存の会社に人的資本のすべてを預けることは極めてハイリスクな人生設計。

    橘玲氏は東日本大震災のあとにさまざまなことを考え、一冊の本を構想した。本書はその前半部分で、日本社会を覆う言い知れぬ不安の正体を「人生設計のリスク」という観点から説明したもの。これまで書いてきた本と重複する部分があるのは、これが氏の人生設計論の完成形だから。

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