カブシキ!

  • 2015/04/28(火)
  • マリアビートル 伊坂幸太郎

    マリアビートル伊坂幸太郎.

    伊坂幸太郎です。

    幼い息子の仇討ちを企てる、酒びたりの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から密命を受けた、腕利き二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者が交錯する――。小説は、ついにここまでやってきた。映画やマンガ、あらゆるジャンルのエンターテイメントを追い抜く、娯楽小説の到達点!

    グラスホッパーの続編として書かれた作品です。
    しかし、わたしはグラスホッパーの内容を完全にわすれていたのですが、この作品は単独としても楽しめます。

    グラスホッパーを読んだのが、2008年でしたから、実に7年のブランクがあるわけです。

    北へ向かう、東北新幹線の中で事件が起きます。
    「木村」「王子」「蜜柑」と「檸檬」「天道虫」。この登場人物たちのそれぞれの視点から、物語は時系列に進んでいきます。

    それぞれが別の目的で東北新幹線に乗り込んでいるのですが、この人物たちが接触し、最後には何人かだけ生き残るという残忍な物語です。
    しかし、伊坂幸太郎独特の書き口、登場人物たちの性格の脳天気さから、楽観的な物語としてスラスラ読める作品になっています。


    なかでも「王子」と呼ばれる人物の残忍さは、他の登場人物の群を抜いています。
    中学生という設定ですが、知能は大人以上で、冷徹で残忍に、周りの人たちを痛めつけていきます。「木村」の息子を病院送りにし、その病院にも監視役をつけて、徹底的に「木村」を追い込むのです。

    「蜜柑」と「檸檬」は愛すべきキャラクターです。
    外見は、怖い殺し屋ですが、内面には繊細な部分が多く、その描写に多くのページが割かれます。特に「檸檬」は機関車トーマス好きという設定で、終始機関車トーマスの話をしています。そして、相棒である「蜜柑」にトーマスシールを使って、メッセージを残す場面にはグッと来ました。

    「天道虫」は、ものすごく不運であるという設定ですが、目の前に起こる不運の連続を自分の能力で乗り越えて行く姿がすごく格好良く描かれています。
    最終的には、この「天道虫」が勝ち組になるのです。


    伊坂幸太郎らしく、いろいろな伏線が散りばめられていて、それらが見事に回収されていくさまは痛快です。
    しかし、最後にはあの人物が事件を解決してしまうとは、、、大どんでん返しもあり、非常に内容の濃い作品だと思いました。

    さすが伊坂幸太郎です。

  • 2014/12/18(木)
  • PK 伊坂幸太郎

    PK伊坂幸太郎

    久しぶりの伊坂幸太郎です。
    たいへん、楽しく読めました。さすが、伊坂幸太郎だなと。

    彼は信じている。時を超えて、勇気は伝染する、と――人は時折、勇気を試される。落下する子供を、間一髪で抱きとめた男。その姿に鼓舞された少年は、年月を経て、今度は自分が試される場面に立つ。勇気と臆病が連鎖し、絡み合って歴史は作られ、小さな決断がドミノを倒すきっかけをつくる。三つの物語を繋ぐものは何か。読み解いた先に、ある世界が浮かび上がる。

    『PK』
    『超人』
    『密使』

    の3つの短編からなっています。
    前半の2つ、『PK』と『超人』は同じ物語のように思えますが、なにかが違う。キーワードはゴキブリ。
    前半の2つを読んだあとで、『密使』を読むとすべてがひとつに繋がる仕組みになっています。
    すごく練られた作品だなと思いました。

    伊坂幸太郎の書くSFの要素が強い作品ですが、無機質な部分はなく、人情味に溢れた物語になっています。
    特にPKにでてくる「臆病は伝染する。そして、勇気も伝染する」という部分はグッと来ます。

    『密使』は最もSFっぽい作品です。しかし、人物のセリフからタイムトラベルのことをきっちり説明する辺りがすごく表現力があるなあと感心しました。やっぱり伊坂幸太郎です。

  • 2013/01/31(木)
  • SOSの猿

    SOSの猿伊坂幸太郎

    伊坂幸太郎です。
    電子書籍で購入しました。


    三百億円の損害を出した株の誤発注事件を調べる男と、ひきこもりを悪魔秡いで治そうとする男。奮闘する二人の男のあいだを孫悟空が自在に飛び回り、問いを投げかける。「本当に悪いのは誰?」はてさて、答えを知るのは猿か悪魔か?そもそも答えは存在するの?面白くて考えさせられる、伊坂エンターテインメントの集大成。

    アマゾンのレビューを見ると、この作品を讃える人よりも、「途中で読むのをやめてしまった。」とか「意味がわからなかった。」などの意見のほうが多いです。
    しかし、僕はとても楽しく読めました。
    新しい伊坂幸太郎の世界だと思います。

    三百億円の損害を出した株の誤発注事件を調べる男、五十嵐、
    ひきこもりを悪魔秡いで治そうとする男、遠藤、

    物語は、この二人の目線から書かれています。遠藤の章、五十嵐の章、が交互に書かれるのですが、なぜかその途中に孫悟空が登場して、あり得ないファンタジーのような出来事が起こるのです。
    伊坂幸太郎は、空想のような出来事をあまり書かないのですが、この作品では孫悟空があり得ないことを次々と仕出かします。


    と思ったら、それは、、、実は。
    という最後に伊坂幸太郎らしい「仕掛け」がありました。
    この仕掛け、いままでの伊坂幸太郎には無い、新しいモノだと僕は感じました。

    良い小説だと思います。



    ※この作品は、五十嵐大介というひとの「SARU」という漫画とリンクしているようで、SARUと併せて読むと深みが増すようです。

  • 2012/08/11(土)
  • モダンタイムス 伊坂幸太郎

    モダンタイムス上モダンタイムス下

    伊坂幸太郎です。

    以前にご紹介した『魔王』の続編として書かれています。
    『魔王』の世界から50年後くらいの時代設定のようです。

    僕は魔王の続編とは思わずに読んでしまいました。読後に『魔王』の続編であることに気が付きました。『魔王』から独立した物語としても十分に楽しめます。
    が、伊坂作品としてはあまりおもしろくなかったと思います。期待以上の感動はありませんでした。

    週刊モーニングで56回に分けて連載していたという背景があり、全部で56のパートから成立しているのですが、各パートに前回までのあらすじと、次回への予告のような描写が入るのが不自然でした。本のページ数はかなり多いのですが、ストーリーがなかなか前に進まない理不尽さもあります。

    あるキーワードでネット検索するひとを監視して、検索したひとに次々と不幸が起こっていく。その背後にはある大きな組織が関与していて、重大な事実を隠蔽するために多大な人数と費用を費やしている。

    われわれの生きている社会は、100%監視されていて、監視社会が進んでいくとこうなってしまうという顛末が描かれているような気がします。

    主人公の妻や、不倫相手などその存在自体が監視社会の象徴のような人物が登場しますが、最終的に正体がわからないまま物語は終わっていきます。

    「伏線が回収されない」物語はでした。少し消化不良です。

  • 2011/01/18(火)
  • ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎

    ゴールデンスランバー伊坂幸太郎

    仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている、ちょうどその時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に、何年かぶりで呼び出されていた。昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。訝る青柳に、森田は「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた―。精緻極まる伏線、忘れがたい会話、構築度の高い物語世界―、伊坂幸太郎のエッセンスを濃密にちりばめた、現時点での集大成。

    伊坂幸太郎です。

    非常に完成度の高い作品です。
    これは映画向きの作品だなあと思っていたら、すでに映画化されていたんですね。知りませんでした。

    伊坂幸太郎らしく、物語のいたるところに伏線が張ってあって、これらが見事に回収されるのです。
    しかも、「あれも伏線だったの?」ってレベルの小さいエピソードまでもがすべて伏線で、後半にグイグイ回収されます。とても痛快でした。

    構成は、
    第一部「事件のはじまり」
    第二部「事件の視聴者」
    第三部の「事件から二十年後」
    第四部「事件」
    第五部「事件から3ヶ月後」

    一部から三部で、事件の概要が分かります。犯人である青柳雅春の人物像もわかります。ここまでが小説のイントロで、メインは第四部です。小説のページの殆どが第四部に充てられています。ここでの青柳雅春の逃走劇にいろいろな人物が絡んで来ます。大学時代の同級生、恋人、後輩、宅配ドライバー時代の先輩、客、などなど。青柳雅春の過去や人柄が徐々に明らかにされていきます。

    伊坂幸太郎独特の世界観で、物語に一気に引き込まれます。

    とても良い作品でした。
    今年の読書の第一位になるかもしれません。

  • 2010/11/11(木)
  • 陽気なギャングと日常の襲撃 伊坂幸太郎

    陽気なギャングと日常の襲撃

    嘘を見抜く名人は刃物男騒動に、演説の達人は「幻の女」探し、正確な体内時計を持つ女は謎の招待券の真意を追う。そして天才スリは殴打される中年男に遭遇――天才強盗四人組が巻き込まれた四つの奇妙な事件。しかも、華麗な銀行襲撃の裏に「社長令嬢誘拐」がなぜか連鎖する。知的で小粋で贅沢な軽快サスペンス! 文庫化記念ボーナス短編付き!


    伊坂幸太郎です。
    陽気なギャングが地球を回す」の続編として書かれています。

    4人の強盗の「日常」が書かれている前半と、その日常を伏線として一つの誘拐事件に収束する後半に分かれます。
    とても考えられた文章で、伏線がどんどん回収されていく様子が気持ちよかったです。誘拐という思い犯罪を扱っているのに、非常にスッキリとした読後でした。

    伊坂幸太郎作品の最大の魅力は、その登場人物すべてが「キャラが立っている」ことです。そして彼ら全員が、「発する言葉に魅力を持っている」ことです。4人の強盗たちは文中でよく会話をするのですが、会話自体に文学を感じることができます。

    特に強盗のリーダーの成瀬は沈着冷静で、物腰が柔らかく、常に先を見越している人物で、尊敬に値する人物です。強盗ですが。
    何事も計画どおりに遂行する成瀬。とてもカッコいいです。僕も成瀬のような冷静な人間になりたいと思います。



    本書に出てくる言葉。僕の好きな言葉。

    「四の五の言わずに勝負しろ。」
    「卵を割らないとオムレツを作ることは出来ない。」

  • 2010/09/24(金)
  • 陽気なギャングが地球を回す 伊坂幸太郎

    陽気なギャングが地球を回す
    嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった……はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ! 奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス!


    伊坂幸太郎です。

    この小説で氏は一躍有名になりました。
    氏のターニングポイントとも呼べるこの作品を未読だったため、読んでみました。

    完成度が高いです。

    新時代を牽引すると言われる伊坂幸太郎の原点があるような気がします。
    ミステリーの要素と、ファンタジーの要素。それに、軽快なセリフの言い回し。独特のキャラ。伊坂幸太郎の良いところがたくさん詰まっています。

    銀行強盗のリーダーである成瀬。彼は市役所の職員でありながら、嘘を見抜く名人。
    普段は、的確に仕事をこなす有用な市役所職員。彼はなぜか銀行強盗をする。
    この辺の微妙な設定が伊坂幸太郎らしいと思いました。
    そして、成瀬の言動は、僕の琴線に触れるものがあります。

    伊坂ファンなら必ず読んでいるこの作品。未読の人は是非。

  • 2010/09/03(金)
  • アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎

    アヒルと鴨のコインロッカー

    引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は―たった一冊の広辞苑!?そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!注目の気鋭が放つ清冽な傑作。第25回吉川英治文学新人賞受賞作。

    伊坂幸太郎です。

    ずっと読みたくて読んでいなかった作品です。
    すごい作品です。ミステリーっぽいところが全然無いのですが、ちゃんとしたミステリーで、最後は「ヤラれた!」感がグッとのこります。

    伊坂幸太郎作品すべてに言えることですが、この作品もキャラがとってもしっかり描かれています。とても魅力的なキャラばかりです。
    この、アヒルと鴨のコインロッカーでは、「河崎」という男がとてもいい味を出します。

    この作品は、現在と2年前という異なる2つの時代が交互に描かれています。2年前に登場するのは、琴美という英語が堪能な女性と、ドルジというアジア人、そして河崎という中性的な男前。
    そして、現在に登場するのは、ドルジと、河崎、そしてこの作品の主人公になる「椎名」です。

    (ネタバレ)
    実は、2年前にも登場して、現在にも登場するのはドルジだけです。河崎と琴美は2年前に亡くなっています。
    2年前になにがあったのか。。。。それがこの作品の主題になっています。では、現在の河崎は誰なのか。

    随所に細かい伏線(それが伏線なのかも微妙)が張られていて、それらが最後に回収されるというすっきりとした後味になるミステリーです。

    オススメです。

  • 2010/07/20(火)
  • 砂漠 伊坂幸太郎

    伊坂幸太郎です。
    砂漠伊坂幸太郎



    入学した大学で出会った5人の男女。ボウリング、合コン、麻雀、通り魔犯との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決…。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれ成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。

    舞台は東北大学法学部。伊坂幸太郎の出身学部です。
    ここを舞台として、北村という主人公の視点から、鳥井、西嶋、南、東堂という新入生たちの大学生活が描かれます。
    ちなみに、この5人のグループ、入学式直後に、東西南北の漢字を持った4人が鳥井宅に集められて、麻雀大会を始めたことによって仲良くなっていきます。

    伊坂幸太郎作品といえば、作品と作品がリンクしていて、作品の合間に他の作品の登場人物の話題が出てくることが有名ですが、この作品に限っては他の作品とのリンクはありません。なので、僕の好きな黒澤もでてきません。

    伊坂幸太郎作品にしては、珍しくこれと言った盛り上がりもありません。淡々と大学生活の4年間が過ぎていきます。
    しかし、さすがは伊坂、少しずつ伏線を張り続けて、最後に回収するという手段を見事に行なっています。それと作品の根幹にある「砂漠に雪を降らせることができると信じる心」のようなものを読者は感じることができます。

    この作品で目立つのは、「西嶋」という男で、メガネで小太りなのですが、やけに自信に満ち溢れていて、憎めない存在です。
    超美人で大学のアイドル的存在の「東堂」はなぜか、西嶋に惹かれます。そんな恋愛劇あり、麻雀のギャンブル的な要素もあり、ホストとのボーリング対決のスリルあり。
    淡々としながらも、大学生特有のイベントが起こります。

    これを読んだ各人は、「学生時代に帰りたい。」と思うに決まっています。

    しかし、その想いはラストに出てくる学長の卒業式での一言によって粉々にされます。
    学長最高。

    非常に良い作品です。
    伊坂幸太郎はこの作品を足がかりに新しい世界を開拓しようとしているのだと思います。

  • 2010/05/09(日)
  • フィッシュストーリー 伊坂幸太郎

    フィッシュストーリー 伊坂幸太郎

    伊坂幸太郎です。

    短編集です。
    表題作のフィッシュストーリーを含めて、4本の短編が読めます。

    「動物園のエンジン」

    「サクリファイス」あの黒澤が登場。僕の好きな黒澤です。黒澤。
    空き巣くせに、探偵のような仕事をしています。


    「フィッシュストーリー」表題作。あるバンドの作ったフィッシュストーリーという曲が、数十年後の世界を変えてしまうという話。
    登場する瀬川と言う数学教師が秀逸です。


    「ポテチ」黒澤が。。また出てきます。
    今回は黒澤が最高にかっこいいです。
    親子愛なんかをテーマにして、空き巣を描くといういかにも伊坂幸太郎らしい作品。

    4本の中で一番良いのは、やはり表題作のフィッシュストーリーでしょうか。
    でも、黒澤が出てくるほかの2作品も捨てがたい。

    この短編集、非常に良いです。

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