カブシキ!

  • 2011/02/25(金)
  • 長生きは罪なのか。老人医療に際して思うこと。 その4

    その1

    その2

    その3


    入院ベッドの枕元に、大きな千羽鶴が置いてあった。
    千羽鶴には白いリボンがかけてあって、そのリボンに鶴を折った人のメッセージが添えられていた。

    「早く元気になってください」

    わたしはこの言葉の虚しさを知っていた。




    ある朝、9歳の息子はトイレで倒れている自分の母親を発見する。倒れたまま微動だにしない母親をみて、9歳の彼はなにを感じたのだろうか。父親は仕事で家を空けていた。

    息子はすぐに119番に電話した。
    病名はクモ膜下出血。
    43歳の母親は命だけは助かった。しかし、自ら手足を動かすことも出来ず、ベッドに寝たきり。自ら食事を摂ることもできず、お腹に開けた穴から流動食を注入されることで栄養を吸収。自ら言葉を発することも出来ず、意思を他人に伝えられず。

    急性期の治療を終えた43歳の彼女は、療養型病院に転院した。といっても彼女に施すことのできる治療はもう残されておらず、ただお腹の穴に流動食を入れ、筋肉の萎縮を予防するためのリハビリだけが行われた。一日に3回オムツを交換され、週に2回、4人の大人に抱えられてお風呂に入れられる。

    巨人軍のコーチであった木村拓也氏がクモ膜下出血に倒れ、30代後半の若さでこの世を去ったのは記憶に新しい。クモ膜下出血という病気は非常に恐ろしい。働き盛りの大人の人生を奪い去っていく。

    彼女の場合は、命を失うことは無かった。
    でも、それは彼女にとって幸せだったのであろうか。彼女に問うことは出来ない。彼女には自分の意思を表出する力が無いから。

    彼女が以前のように元気に歩いて、元気に子供たちと遊ぶことは、今後絶対に有り得ない。彼女はずっと病院のベッドから動くことはないだろう。
    9歳の息子は、病院のベッドでただ横たわっているだけの母親をみてどう思うのだろうか。
    父親は病院で寝ているだけの妻をみてどう思うのだろうか。

    病院に入院していれば、経済的負担が発生する。お見舞いに行くために、父親は時間的な負担も強いられる。息子は学校の友達に母親のことを話すのだろうか。
    彼女が永く生きることによって、誰が幸せになるのだろうか。


    さて、文頭に戻り、千羽鶴のリボンに書かれた「早く元気になってください」である。
    このリボンは、息子の学校のPTAによって書かれたものだと知った。彼女の回復の可能性が無いことを知りながら、この言葉を書いたPTA。
    その無責任な言葉にわたしは憤りを感じていた。

    徒に平均寿命の延長だけを追い求める日本人の考え方。この考え方に、わたしは怒りの矛先を向けた。
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    コメント

    こんにちは

    ブログ閲覧させていただきました!

    資産運用には、様々な知識と考えを持って

    運用されているんですね。

    とても納得しまして お勉強になりました

    応援させてもらいます!

    >株の新さん

    コメントありがとうございます。
    よろしくお願いいたします。

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