カブシキ!

  • 2010/12/06(月)
  • 長生きは罪なのか。老人医療に際して思うこと。 その1

    橘玲氏のこのサイトこの記事を読みながら、自らの仕事について考えた。
    これから団塊の世代が老人となり、日本は超高齢化社会に突入する。当然、老人に必要な医療費も膨張する。この問題から逃げることはできない、いまのうちに現実を知っておく必要がある。これは国民の義務だ。



    体にたくさん管を入れられた状態で長生きはしたくない。体にチューブが入った状態で長生きするのは嫌だ。こう思う人はたくさんいるのではないか、とわたしは思う。

    あなたの父親が脳梗塞となり、意識は無く、寝たきりの状態になった。自分で食事を飲み込むことが出来ず、鼻から胃までチューブを入れて流動食を流しこむことでしか栄養を摂ることが出来ない。

    親族であるあなたに医者が問う。「チューブを通して流動食を摂ることでしか生きていけません。チューブを入れても良いですか?それとも、このままにしておきますか。」

    数年前、わたしは問う側の仕事をしていた。



    県庁所在地のS市街から、山に向かって車を走らせる。20分ほど走ると、山の中腹にラブホテルと見間違えるほどのお城のような建物が現れる。その建物には「スズキ病院」と看板がかけてあった。

    230床。その全てが療養型病床であった。入院患者の平均年齢は80歳を超える。

    認知症、脳梗塞後遺症、パーキンソン病、くも膜下出血術後、脳挫傷、蘇生後脳症、患者の多くはこのような病名が付けられている。すなわち、寝たきりの状態で、自分の意志を相手に伝えることができない。自分で摂食することもできず、自分で排泄物を処理することもできない。入院患者の殆どは寝たきりの患者であった。

    一日に3回、流動食が管を通して胃の中に流し込まれる。一日3回、オムツを換えてもらう。週に2回、お風呂に入れてもらう。
    最近の流動食は非常に性能が良い。人間が生きていくための栄養素は全て含んでおり、流動食さえ食べておけば何年でも生きられる。

    長く寝たきりで居ると、喉や肺に溜まった痰をうまく排出することが出来ないことが多い。痰をチューブで吸引するために、患者の喉には孔が開いている。喉に孔が開いていると、言葉を発することは出来ない。その代わりに、痰はスムースに吸引できる。

    排尿がうまく出来ない患者には、尿道カテーテルが入れられる。尿道カテーテルさえ入っていれば、尿は速やかに体外に排出される。

    スズキ病院にはこのような患者が県内各地から集まってきていた。


    73歳の父親が脳梗塞を起こし、救急車で市内の総合病院に運ばれた。総合病院の必死の治療で、家族の願いが通じて、なんとか急性期を乗り越えた。しかし、入院から14日が過ぎると、早めに退院するように促される。寝たきりの家族を家に連れて帰るわけにはいかず、困った家族はスズキ病院に入院を申し込む。

    昨日まで元気に働いていた45歳の夫が、くも膜下出血で倒れた。救急車で市内の脳神経外科病院に運ばれ、なんとか救命できた。救命はできたが、夫は二度と目も開けることができない。二度と手も足も動かすことは無い。青天の霹靂に困り果てた妻に、脳神経外科病院は退院を迫る。「症状は固定しました。1週間以内に転院先を探してください。」
    精神的にも経済的にも追い詰められた妻は、スズキ病院に入院を申し込む。

    橋の下で生活していたホームレスが、倒れて動かなくなっていた。善意の第三者が119番通報し、救急車で総合病院に運ばれる。総合病院は身元もわからない患者を放り出すわけにもいかず、取り敢えず治療する。治療後、幸か不幸か患者は一命をとりとめた。しかし、患者は植物状態。ひとりでは生きていくことができない。さて、どこに退院するのか。
    この場合は、S市がホームレスの身元を管理する。生活保護者となったホームレスを入院させるために、S市職員は、スズキ病院に入院を申し込む。


    このような事例がたくさんある。毎日のように入院の申込があった。

    その2(クリック)
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